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インサイドセールスを社内浸透させる具体的な方法

近年、製品ライフサイクルの短命化や、コモディティ化にともない、従来型の営業手法では、売上高の拡大が望みにくい時代になっています。そこで最近、画期的な営業方法として、「インサイドセールス」が注目されています。インサイドセールスは、営業活動を効率化し、精度の高い営業活動が出来るという特徴を持っています。インサイドセールスを導入するにあたって、どんなことに留意しながら実施すべきかを見ていきます。

先ずはトップの理解と宣言

ロングセラーの製品が減少し、常にライバルとの競争にさらされている現代、営業の効率化や強化の切り札として、「インサイドセールス」の導入が始まっていますが、画期的な効果をもたらす仕組みであるものの、まずは企業としての導入の意思を固める必要があります。そのためには、何が必要なのでしょうか?

トップ自ら必要性への理解

まずは、経営トップ自ら、インサードセールスの仕組みをしっかり把握することが必要です。その上で、自社への導入の必要性をしっかり認識する必要があります。インサイドセールスは単なる業務システムの導入ではなく、営業の仕組みを根本的に変革するものであるからです。社員から問われれば、メリット・デメリットくらいは説明できることは、必須事項でしょう。

導入の宣言

インサイドセールスの仕組みやメリット・デメリットがしっかり理解出来た後は、トップによる明確なコミットメントが必要です。その際、「テストで導入してみよう」という中途半端な意思表示では社員はついていきません。将来の経営戦略とリンクさせ、社員にその必要性を明確に訴えることが重要です。

収益バランスへの配慮

インサイドセールスの導入を決意した場合でも、効果が初年度から出るとは限りません。インサイドセールスは営業システムのカルチャーをも変える変革です。企業としては、現行の営業方法で支えられている収益にも配慮しながら、導入を進めていくべきです。

特に、従来型の営業手法で成功してきた営業パーソンには、「自分たちが会社を支えてきた」という自負があります。インサイドセールスが有効な手法だとしても、今すぐ安定的な収益を生み出すわけではありません。

これまで、収益を上げてくれた社員に対する敬意も払いつつ、新たな体制を構築する必要があります。ある意味で、インサイドセールスをスムーズに浸透させていくための関門であるとも言えます。

概要を社員に知らせるためのセミナーの実施

インサイドセールスとはどんなものか?主に営業部門・マーケティング部門に対して理解をさせるセミナーを開催すると良いでしょう。

このセミナーの目的は、今後会社の体制がこうなっていくというインフォメーション的なものであり、近い将来に向けて、社員の意識を変革していくきっかけにするイベントという位置づけで良いでしょう。

課題の明確化と段階に応じたゴールの設定

営業活動を効率化あるいは、効果的に行いたい企業は多く出現しています。しかし、企業によって、事情は様々です。自社にとって、経営や営業上の課題は何なのか?それを、インサイドセールス手法によってどのくらい解決したいのかを明確にしていきましょう。

自社の課題と解決したいテーマ

営業上の課題は、様々あることでしょう。例えば、一般的には以下のような課題が考えられます。

  • 優秀な営業パーソンのノウハウが共有されない
  • 特定の営業パーソンの売上に頼りすぎている
  • 既存ユーザーのフォローに追われて新規客が追えていない
  • 商談が長引きすぎてクロージングがなかなか出来ていない
  • 営業パーソンの出張コストがかかりすぎている割には成果が出ていない

段階ごとのゴール設定

解決したい営業課題は多くあることでしょう。しかし、インサイドセールスは、営業に対する考え方まで変えていくものですから、一度に全ての課題を解決することは出来ません。「緊急度を要する課題」や「取り組みやすいテーマ」「将来的に解決したいこと」を分類しステップを決めて取り組んでいくことが重要です。

企業によっては、テレマーケティングなど、インサイドセールスの一部を行っているところもあるでしょう。そういった活動や部署と、インサイドセールスのシステムの融合も、どこかの段階で行うことが必要です。

成功事例の創出

インサイドセールス自体は、欧米では1980年ころから始まっていますが、日本においては、新たな営業手法です。同業他社で多くの成功事例があるわけではありません。つまり、ステレオタイプの成功事例が多くあるわけではありません。企業ごとの事情もあるでしょう。

そういったことを勘案すると、先ずは社内で「小さな成功事例」を生むことが重要になります。全社的に影響の少ない、特定の製品分野や部署に限定してスタートすると良いでしょう。

スタープレーヤーの育成

特定の製品分野や部署が選ばれたら、その中でも、積極的に取り組んでくれる社員を選抜し、教育していきましょう。会社としても、資金や教育など、手厚いフォロー体制を作りましょう。先ずは、成功事例を作ることが必要です。

社員の選抜には、立候補制を導入することも良いアイディアです。自ら望んでトライしてくれる社員は積極的に取り組んでくれることでしょう。

限定チームでの成功

対象製品分野や販売ルートを限定し、小さなチームとして成功することも有効です。営業活動は本来、他部署の業績や成功事例を気にしています。成功事例を作ることで、競争原理を働かせ、社内への普及の足掛かりにしていきましょう。

社内全体への普及

スタープレーヤーの出現や、特定チームの成功を経て、次はいよいよ会社全体へ普及させていく時期です。

インサイドセールスの実践的な教育の開始

ここで改めて、インサイドセールスの教育を行っていきます。トップが導入を宣言する段階ではインフォメーション的な啓蒙活動が目的でしたが、この段階での教育は、実施を前提にした具体的内容にするべきです。

従来型営業パーソンの扱いに注意

ここで重要になるのが、従来型営業手法で成果を出してきた営業パーソンに対する接し方です。人間は長年の成功体験に固執するものです。しかも、成功を収めてきたわけですから、インサイドセールスにアレルギー反応を示す社員が出ることが充分に考えられます。

インサイドセールスは、従来型の営業を否定するものではありません。見込み客づくりやアフターフォロー部分をインサイドセールス部門が担うことで効率化を図りながら、営業は企画・提案・商談・クロージングという営業の中核部分に特化できるわけです。

つまり、営業パーソンは、本来の最も重要な部分に特化できるという訳です。そのことを、面談などを通じて動機付けしていくと良いでしょう。

目標の設定

インサイドセールスは、フィールドセールスと同様、企業活動の一つですから、目標設定が必要になります。特にインサイドセールス自体の有効性を判断するためにも、目標の設定は重要事項です。

KGI / KPIの設定

最近の企業で良く活用されているのが、KGIやKPIです。KGIとは、Key Goal Indicatorの略語で、日本語で「重要目標達成指標」といわれる指標です。いわゆる、最も手に入れたい目標のことで、多くの場合、売上高や利益が該当するでしょう。

KPIとは、Key Performance Indicatorsの略で、日本語で「重要業績評価指標」という意味です。KGIを達成するためのプロセスを評価する指標といえるでしょう。

インサイドセールスに有利なKPI

フィールドセールスでは、売り上げなどのKGIに焦点が当てられがちです。KGIが達成されればKPIの中身は議論されることはあまりありません。KGIがうまく達成されない場合でも、その要因でもあるKPIの中身はあまり話題にされることはありませんでした。

しかし、インサイドセールスでは、KPIが刻々と変化し、共有されているため、売上などのKGIが達成されそうにない時、KPIの要素を改善することにより、目標KGIを達成しやすくできます。

さらに、KGIに影響度が強いKPIの要素が分かり、次年度以降の目標達成に対して、更なる改善が可能になります。

フィードバックと軌道修正

インサイドセールスを部分的に導入したり、全社的に導入したりした後は、実施した工程を振り返り、軌道修正を図っていきましょう。いわゆる、PDCAサイクルのCheck(検証)とAction(改善)にあたる部分です。

特に、部分的に行った特定部署のフィードバックは、しっかり行いましょう。全社的導入の際の大きな道標になるからです。

インサイドセールスを加速するツールの活用

インサイドセールスを効果的に進めるために、各種ツールが普及し始めています。企業の特性に合わせて、利用したいものです。各ツールを有機的に組み合わせることにより、営業効率を究極にまで高めてくれます。

ツールの多くはソフトウェアで提供されますが、情報の共有化や利用のしやすさが重視されるため、クラウドサービスで提供される場合がほとんどです。

MA(マーケティングオートメーション)

見込み客(リード)の発見や育成、商談発生までのプロセスを担う仕組みです。特にネット販売などのBtoC分野においては、Webページへのアクセスや、資料請求の履歴から顧客情報をデータベース化し、メールでのセール情報配信などでアプローチし、顧客データをスコア化することまで自動化することが出来ます。

BtoB分野の場合、見込み客に対してアプローチ方法が多様なため、全てを自動化するのは困難ですが、従来のリード発見、育成プロセスに比べて、大きく効率化できます。

SFA(セールスフォースオートメーション)

商談開始からクロージング、受注までのフィールドセールスの活動を支援するためのツールです。営業活動の全てをデータベース化し、どんなアプローチが有効なのか、迅速に分析して実施することが出来ます。

SFAの内容は、フィールドセールス部隊全員でリアルタイムに共有できるため、担当者の転勤や退職などでクロージングチャンスを失うことが無く、営業ノウハウも共有化できます。営業のブラックボックス化を防ぐことも出来るわけです。

CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)

受注後、長期にわたって自社との取引を継続してもらうための仕組みです。顧客との取引履歴やアプローチ履歴、クレーム情報までもデータベース化し、最適な顧客メンテナンスを図ることにより、離反防止、アップセル(追加受注)や、インフルエンサーとしての役割を担ってもらえることもあります。

さらに、これらのツールは、既存のパッケージ化された仕組みを活用することも出来ますが、APIという機能を活用して既存のシステムと連携を図ったり、カスタマイズしたりして、より自社に合った仕組みにすることも可能です。

まとめ

インサイドセールスを社内浸透させる具体的な方法について見てきましたが、いかがだったでしょうか?インサイドセールスは、従来、特定のトップセールスパーソンに依存しがちだった売上を安定化させ、ブラックボックス化しがちだった営業ノウハウを全社的な営業力に転換させる有力なツールとして注目されています。

新しい手法は、旧来の営業体験で成功してきた伝統的な企業こそ、導入するのは難しいものだと言われています。反対勢力も発生する恐れもあるでしょう。しかし、製品のライフサイクルが極端に短くなり、短期間に収益を確保しなくてはならなくなった現代、無駄なくスピーディーに高確率で収益を確保していくインサイドセールス手法の導入は、企業体質の強化の面からも、導入を急ぐ必要があるでしょう。

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